ヨーロッパの片隅で、家族と鳥一羽と暮らしています 。  世界遺産とポルノグラフィティとホンとオンガクが好き。    よければアシアトを残してくれればウレシイです☆       写真撮影:miyuとその家族


by miyu-sakura
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

だから。

初めて短い作り話を書きます。キット最初で最後です。1話完結です。
最後の方の集中力のなさは、病み上がりと言うことで、ご容赦ください・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「だから。」そういうときみは、いつも決まって黙り込んでしまうんだ。
 「だから?」ぼくはさながらうまれたてのカッコウの雛を抱くように、細心の注意を払う振りをして聞き返す。全く、何でこんなに気を使わなくっちゃいけないんだ。
 「だから・・・」そう、やっぱりそれ以上は何も返ってはこない。そうすると、急に二人の間のたった30センチの距離が、まるで永遠に相容れないプラスとマイナスみたいに、歪みはじめるんだ。
 イッタイ、キミハ、ナニヲボクニ、ツタエタインダ?

 こういうのも何だけど、ぼくらは比較的うまくやっていたと思う。ぼくらは、大学の学食で初めて隣り合わせてから今朝まで、いつも一緒だった。バイトや、男同士で飲みに行くことはあっても、帰る家は一緒だから、毎日必ずカオをあわせていたし、しゃべることがなくなるまで、朝までずっとしゃべっていたことだってあった。
 それに、ぼくらはベットのなかでだって、いい相性だったと思う。きみ以外の女がぼくの前に現れたって、それは忘れられた井戸のようなものだ。けして水を湛えはしない。
 キミハ、ソウハ、オモワナイノカ?

 今日、バイトから帰ると、部屋にきみはいなかった。
 きみの存在は完全にかき消され、ぼくの部屋はもう、ぼくの部屋ですらなくなっていたけれど、不思議とそれは、半ば予想されたこと、必然的なことに思えた。
 どんなことでも、不完全なまま大きくなっていけば、いつかは根本から壊れてしまうんだ。さながら、ぼくらがよくやっていたジェンガのようにだ。
 くずれていく・・・・ガシャーン、だ。

 ぼくらは、完全には分かり合っていなかったことくらい、いくらぼくでもわかる。
 だけど、人は完全に分かり合えないことくらい、きみだってわかっていたんじゃないのか?
 ボクラハ、カンゼンニハ、ワカリアエナカッタ。
 オーケー、そういうことだ。きみが考えていたことなんて、ぼくにはまるでわからなかった。群れから置いて行かれた、一匹のヌーみたいだ。わかるかい?ヌーだ。ぼくはきみと肌を合わせていながら、いつも置いて行かれていたんだ。広いサバンナにただの一匹でだよ。
 今朝までは群れからはぐれずにいたのに。いや、もうずっと前からはぐれていたのかもしれない。そんなことにも気づかずにいただけで。

 「だから。」きみは、ぼくにどうして欲しかったんだ?どうしようとしたんだ? ぼくは何度もきみの答えを待ったし、これでも、きみの答えを推し量ろうとしたんだ。

 これは、きみにしかできないパズルだ。一枚でも欠けたら答えはでない。どんなにすばらしいパズルも最後のひとかけらがなければ所詮はゴミだ。
 ぼくは、暮らす毎日の中で、いつか、いくつかの、かけらを、捨ててしまったのかもしれない。 きみは、そして、ずっと、ずっとそのちいさなかけらを探していたんだ。たった、1人で。
 絡み合った、きみのヲモイの前では、言葉はあまりにも小さく、あまりにも無力だ。どんな言葉も、きみを包み込みはしない。ただ、黙り込むばかり。
 「だから。」の後は、言わなかったのでなく、きっと、ことばを選べなかったんだ。言えなかったんだろう?
 そんなヲモイの前では、ぼくはただ、カッコウを抱いた傍観者。分かり合えるはずは、ない。

 気がつくと、窓の外は雨だ。5月の雨は、きみを濡らしているのか。震えさせているのか。
 窓をうつ雨が、ぼくを、濡れてもいないぼくの心を湿らせていく。きみの体を冷やしている雨が、ぼくに伝わる。言葉でない、きみの悲鳴を感じる。きみの悲鳴を、ぼくはまだ、聞くことができる。

 大事なことは、分かり合えないことではなく、分かり合いたいと強く願えるかどうかだ。

 ボクハ、キミト、モット、ワカリアイタイ
 キミヲ、モット、シリタイ
 モット、キミヲ、アイシテイタイ

 ぼくは行かなくては。
 「だから」の先の言葉が見つからないなら、時をかけて、きみの髪を梳くように、きみのヲモイをほどいていこう。ひとつ、ひとつ、大事に。

 さあ、ぼくは行かなければ。「だから。」を「それでも。」に変えるために。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 モチーフにした曲は、他でもないポルノグラフィティの「サボテン」です。
f0062821_15185080.jpg


(ベルギー、ゲントにて)
[PR]
by miyu-sakura | 2006-03-08 15:35 | それでも・・・