ヨーロッパの片隅で、家族と鳥一羽と暮らしています 。  世界遺産とポルノグラフィティとホンとオンガクが好き。    よければアシアトを残してくれればウレシイです☆       写真撮影:miyuとその家族


by miyu-sakura
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後悔

その少年を見たのは、イスタンブールのスルタンアフメット・ジャミイ、
通称ブルーモスクの回廊だった。


時刻は、夜10時の礼拝の30分ほど前で、
いくら初夏とはいえ、その頃にはすっかり日も沈み
暗闇の中、ライトアップされた6本の尖塔があたりをぼんやり明るくしていた。


夜の幻想的なモスクを見ようと訪れた私たちに、
少年は、トルコ独特の紐付き独楽を買わないかとを声をかけてきたのだ。


私は、第三国と呼ばれる国の、
雑然とした雰囲気や、情緒あふれるモスクや寺院は好きなのだけど、

日本人と見るや、高額を吹っかけてくるお土産屋さんや
いつまでもまとわりついて離れない客引きが苦手だ。

マーケットに行っても、必ず吹っかけてくるから値段交渉しないといけないし
タクシーに乗っても、隙があればぼったくろうとするし、
「ワタシノ奥サン、ニホンジン」とひっきりなしに声をかけられる。


正直、そんな時刻だったから、
一日中そんな人たちを相手にして心底うんざりしていて
私は無視を決め込んで、しつこく言ってくる彼を全く相手にしなかった。



でも、そのモスクを見た帰り道、
たまたま歩道脇に座り込んでいた物売りのおじさんに
家族の1人がつかまってしまい、どうしてもその独楽が欲しいと言い出した。



「いくらですか?」

「1トルコリラ(約100円)だ」


その金額を聞いた時、私ははっとして
今来た道を取って返し、回廊まで戻り、少年を探した。

どうせ買うなら、彼から買ってあげようと思ったのだ。


朗々としたコーランの調べが響き渡る中、
彼の姿はなく、もうすぐ礼拝の始まるであろう回廊は一人の影すらなくて。



その時、思い出した。

その少年が、とても小さかったことを。

その浅黒い顔の瞳は大きく、幼ない顔立ちだったことを。



普通ならば、その年頃の少年は、明日の学校に備えて
暖かい布団の中で眠っている時間のはずなのに、
彼は1人、手にたくさんの独楽を持ち、
観光客に声をかけては、器用に独楽を回して見せていた。

誰にも相手にされてなくても。



私が彼の独楽を買っても買わなくても、
彼の家が急に裕福になるはずもなく

私には、彼の貧困がどうしようもないことなどわかっているけど、



それでも、

たった1晩でも、

100円ぽっちの独楽を売るために、夜遅くまで物売りに出ていた彼に
こんなに売れたんだよ、と少しでもうれしい思いにしてあげたかった。


たくさんの売れ残りを抱えての家路は、さぞかし気が重かっただろうから。


そんなこと考えても、
本当に本当に、彼の貧困は、変わらないとはわかっているのだけど。


もし、もう一度彼に出会うことがあったら
持っている独楽をたくさん買ってあげて、
髪をなでてあげたい、


そう思った。

f0062821_56159.jpg

(サハラ砂漠。塩湖の日の出)
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by miyu-sakura | 2007-05-29 22:52 | それでも・・・